日本

 

日本のクライメート・

トランジション・ボン

 

 

 

コメンタリークライメート・トランジション・ボンドに関する7つのキーポイント 

財務省(MOF)は、現在、計画中の初の気候変動トランジション債のロードショーを実施しています。債券の発行資金は、国の「緑の改革(GX)計画」の各分野の資金調達に充当されます。MOFに提供した正式なコメントは以下のとおりです。

 アントニオ・グテーレス国連事務総長曰く、人類は「気候変動」ではなく「気候危機」に直面している。迅速かつ大幅なGHG排出削減が求められている。世界がそれを成し遂げられるかどうかは、革新的な産業技術ソリューションの普及にかかっている。そしてそれらソリューションの普及が必要な時間軸で実現するか否かは、政府による大胆かつ持続的な支援策の実施にかかっている。 

日本のGX推進戦略は、あらゆる国や地域で実施されるべき移行戦略の一例である1。目標達成のためには、日本のGX推進戦略は現状からの更新と改善が必要である。これは米国・欧州・中国・インドを含むその他の国や地域の移行戦略についても同様である。Climate BondsのGX推進戦略に対する課題認識と提言は2023 年10月公表の「日本へ向けた信頼できるトランジションファイナンス発展のための提言」にまとまっている。それでもなお、政府によってこのような支援策が実施されていることは極めて重要であり、支持されるべきである。 

Climate Bondsの以下コメンタリーは第一回目のクライメート・トランジション・ボンド(初回債)の資金使途を対象としており、先に発表されたより広範なクライメート・トランジション・ボンド・フレームワークまたはGX推進戦略全体に対する見解ではない点に留意されたい。 2

詳細は以下の通りである。 

1. 初回債は、グリーンボンド・データベース・メソドロジーに適合し、Climate Bondsが運営するグリーンボンド・データベースに含まれる見通しである。 3

2. 資金使途全体の過半(55.5%)は産業部門とエネルギー部門の削減目標に沿った移行を支える技術の研究開発(R&D)支援に充当される。Climate Bondsは、日本がG20バリ首脳宣言(2022年11月)とG7広島首脳コミュニケ(2023年5月)などで地球の気温上昇を(産業革命前から)1.5°Cに抑える努力を追求すると宣言していることをとりわけ重視した。この野心的な目標の達成には、幅広い分野での技術革新が必要であり、それらには実証されていない技術も含まれる。したがって、特にソブリン債に関しては、十分に野心的といえる削減に焦点をあてたR&Dへの支出を支持する。 45 6

3. R&D以外の資金使途(44.5%)は、低炭素化の支援を目的とする補助金に充当される。その大部分(81.6%)はクリーン運輸のためのSiCパワー半導体素子や蓄電池に係る供給網の強化、住宅の省エネルギー化である。 78

4. 資金使途の多く(>39.1%)がグリーン性の高い(ダークグリーン)事業に充当される。これには、ペロブスカイト型太陽電池と風力発電に係る研究開発支援、低炭素モビリティと蓄電池に関連する補助金支出等が含まれる。 9

5. 資金使途は水素還元製鉄技術に係る研究開発支援(18.0%)を含んでいる。これらの研究開発は(産業部門で最も多排出な)鉄鋼セクターの排出削減に大きく貢献しうるものである。 10

6. 資金使途は電力部門のガス火力発電関連投資を含まない。初回債の資金使途から除かれたことをとりわけ評価する。 

7. 資金使途は石炭火力発電所におけるアンモニア混焼の運用に関する投資を含まない。初回債の上位にあるGX推進戦略については、石炭アンモニア混焼発電が特に関心と議論を呼んでいる。石炭火力発電におけるアンモニア混焼は、引き続きGX推進戦略になんらかの形で含まれる要素ではあるものの、初回債の資金使途には含まれていない。 

燃料アンモニアに関連する資金使途は研究開発支援に限定されており、これらは船舶燃料やガス火力発電所における燃料代替など、多岐に渡る分野での応用を想定するものである。 

Climate Bondsは、1.5°C目標達成に見合うだけの排出削減を早期に実施するための研究開発を歓迎している。一方でこれらが社会実装・運用される段階においては、いかなる設備投資も国際エネルギー機関(IEA)の2050ネットゼロ排出シナリオに織り込まれている化石燃料フェーズアウトの時間軸と整合し、かつ燃料には低炭素水素・アンモニアの使用が求められることになる。 

 

1 脱炭素成長型経済構造移行推進戦略 

2 2024年2月発行予定のクライメート・トランジション利付国債 

3 https://www.climatebonds.net/files/files/CBI_Method_Criteria_03F.pdf 

4 プロジェクト 1-17 (プロジェクト番号は2024年1月に日本格付研究所発行のクライメート・トランジション利付国庫債券に対するセカンド・パーティ・オピニオンに対応。以下同様。) 

5 https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100422034.pdf 

6 https://www.g7hiroshima.go.jp/documents/pdf/Leaders_Communique_01_jp.pdf...

7 プロジェクト 18-24 

8 プロジェクト 18, 19, 20 

9 プロジェクト 1, 14, 19, 20, 22, 23, 24 

10 プロジェクト 7, 8  

 
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日本のクライメート・トランジション・ボンド 

 

コメンタリークライメート・トランジション・ボンドに関する7つのキーポイント 

財務省(MOF)は、現在、計画中の初の気候変動トランジション債のロードショーを実施しています。債券の発行資金は、国の「緑の改革(GX)計画」の各分野の資金調達に充当されます。MOFに提供した正式なコメントは以下のとおりです。

 

 

 アントニオ・グテーレス国連事務総長曰く、人類は「気候変動」ではなく「気候危機」に直面している。迅速かつ大幅なGHG排出削減が求められている。世界がそれを成し遂げられるかどうかは、革新的な産業技術ソリューションの普及にかかっている。そしてそれらソリューションの普及が必要な時間軸で実現するか否かは、政府による大胆かつ持続的な支援策の実施にかかっている。 

日本のGX推進戦略は、あらゆる国や地域で実施されるべき移行戦略の一例である1。目標達成のためには、日本のGX推進戦略は現状からの更新と改善が必要である。これは米国・欧州・中国・インドを含むその他の国や地域の移行戦略についても同様である。Climate BondsのGX推進戦略に対する課題認識と提言は2023 年10月公表の「日本へ向けた信頼できるトランジションファイナンス発展のための提言」にまとまっている。それでもなお、政府によってこのような支援策が実施されていることは極めて重要であり、支持されるべきである。 

Climate Bondsの以下コメンタリーは第一回目のクライメート・トランジション・ボンド(初回債)の資金使途を対象としており、先に発表されたより広範なクライメート・トランジション・ボンド・フレームワークまたはGX推進戦略全体に対する見解ではない点に留意されたい。 2

詳細は以下の通りである。 

1. 初回債は、グリーンボンド・データベース・メソドロジーに適合し、Climate Bondsが運営するグリーンボンド・データベースに含まれる見通しである。 3

2. 資金使途全体の過半(55.5%)は産業部門とエネルギー部門の削減目標に沿った移行を支える技術の研究開発(R&D)支援に充当される。Climate Bondsは、日本がG20バリ首脳宣言(2022年11月)とG7広島首脳コミュニケ(2023年5月)などで地球の気温上昇を(産業革命前から)1.5°Cに抑える努力を追求すると宣言していることをとりわけ重視した。この野心的な目標の達成には、幅広い分野での技術革新が必要であり、それらには実証されていない技術も含まれる。したがって、特にソブリン債に関しては、十分に野心的といえる削減に焦点をあてたR&Dへの支出を支持する。 45 6

3. R&D以外の資金使途(44.5%)は、低炭素化の支援を目的とする補助金に充当される。その大部分(81.6%)はクリーン運輸のためのSiCパワー半導体素子や蓄電池に係る供給網の強化、住宅の省エネルギー化である。 78

4. 資金使途の多く(>39.1%)がグリーン性の高い(ダークグリーン)事業に充当される。これには、ペロブスカイト型太陽電池と風力発電に係る研究開発支援、低炭素モビリティと蓄電池に関連する補助金支出等が含まれる。 9

5. 資金使途は水素還元製鉄技術に係る研究開発支援(18.0%)を含んでいる。これらの研究開発は(産業部門で最も多排出な)鉄鋼セクターの排出削減に大きく貢献しうるものである。 10

6. 資金使途は電力部門のガス火力発電関連投資を含まない。初回債の資金使途から除かれたことをとりわけ評価する。 

7. 資金使途は石炭火力発電所におけるアンモニア混焼の運用に関する投資を含まない。初回債の上位にあるGX推進戦略については、石炭アンモニア混焼発電が特に関心と議論を呼んでいる。石炭火力発電におけるアンモニア混焼は、引き続きGX推進戦略になんらかの形で含まれる要素ではあるものの、初回債の資金使途には含まれていない。 

燃料アンモニアに関連する資金使途は研究開発支援に限定されており、これらは船舶燃料やガス火力発電所における燃料代替など、多岐に渡る分野での応用を想定するものである。 

Climate Bondsは、1.5°C目標達成に見合うだけの排出削減を早期に実施するための研究開発を歓迎している。一方でこれらが社会実装・運用される段階においては、いかなる設備投資も国際エネルギー機関(IEA)の2050ネットゼロ排出シナリオに織り込まれている化石燃料フェーズアウトの時間軸と整合し、かつ燃料には低炭素水素・アンモニアの使用が求められることになる。 

 

1 脱炭素成長型経済構造移行推進戦略 

2 2024年2月発行予定のクライメート・トランジション利付国債 

3 https://www.climatebonds.net/files/files/CBI_Method_Criteria_03F.pdf 

4 プロジェクト 1-17 (プロジェクト番号は2024年1月に日本格付研究所発行のクライメート・トランジション利付国庫債券に対するセカンド・パーティ・オピニオンに対応。以下同様。) 

5 https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100422034.pdf 

6 https://www.g7hiroshima.go.jp/documents/pdf/Leaders_Communique_01_jp.pdf...

7 プロジェクト 18-24 

8 プロジェクト 18, 19, 20 

9 プロジェクト 1, 14, 19, 20, 22, 23, 24 

10 プロジェクト 7, 8  

 
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