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トランジションファイナンスを通じた日本のグリーン・トランスフォーメーション(GX)の推進

Published: 12 Jun 2025

トランジションファイナンスを通じた日本のグリーン・トランスフォーメーション(GX)の推進

2025年5月9日、クライメート・ボンド・イニシアチブは、東京にてクローズドの「GXおよびサステナブルファイナンスにかかるラウンドテーブル」を開催し、日本の金融セクターおよび関係省庁の主要関係者を集い、意見交換を行いました。このラウンドテーブルは、トランジションファイナンスが日本のGXおよびより広範なサステナブルファイナンスの目標をどのように支援できるかについて、戦略的かつ率直な対話を行う場となりました。 

本ラウンドテーブルはGX推進機構の本部にて開催され、各セクター間の率直な意見交換が行われました。議論は、エネルギー政策の実行や市場との整合性に加え、投資の機会とその課題、地政学的リスク、さらには信頼性と包摂性を備えたトランジションファイナンスのナラティブ構築の必要性にまで広がりました。 

日本のトランジションの転機 

日本政府は、経済競争力の強化や地域の活性化も同時に促進する形で脱炭素化を進めることにより、GX目標の加速に向けて好位置にあります。しかし、こうした野心的な目標を具体的な成果へと転換するには、政策のリーダーシップとセクター横断的な協調的取り組みの両立が求められます。 

参加者の間では、政策枠組みと市場インセンティブを整合させ、信頼性のある投資可能な案件パイプラインを確保することが、意義ある進展につながるという認識が共有されました。ラウンドテーブルでは、以下の3つの共通テーマが浮き彫りになりました。 

  • 実行上のギャップ:近年、政策の明確化は進んでいるものの、とくに再生可能エネルギー分野において、許認可やプロジェクト開発のボトルネックが民間投資の遅れを招いている状況が続いています。 
  • 投資家の懸念:機関投資家からは、リスク評価やトランジション投資のリスク軽減を適切に行うために、より予測可能なリターンと高品質なESGデータが求められているという声が上がりました。 
  • ストーリーテリング:ラウンドテーブルの参加者より、社会の信頼を築き、「グリーンハッシング」(気候変動に関する取り組みの開示を企業が批判や反発を恐れて控える傾向)を防ぐためにも、目に見える成功事例を示すことの重要性を強調しました。 

札幌が描くグリーンな未来 

ラウンドテーブルの開始に先立ち、メディアも同行のもと、札幌市のグリーン・イノベーションの拠点としての地位確立を目指す取り組みが紹介されました。札幌市のGX推進担当局長である西山香織氏は、国際的な投資家の誘致を見据え、クライメートボンド基準に基づくGXプロジェクト認証制度の構築など、札幌市が最近進めている取り組みを紹介しました。 

さらに西山氏は、外国企業やスタートアップの支援を目的に、4月から新たに導入された税制優遇制度についても紹介し、グリーンファイナンスとイノベーションの拠点を目指す札幌市の意欲を強調しました。 

地域主導への期待 

Climate BondsのCEOであるショーン・キドニー氏は、日本のグリーントランジションを推進する上で、地域の取り組みの重要性を強調しました。AIやデータセンターの拡大によるエネルギー需要の増加に触れつつ、再生可能エネルギーによる地域活性化のモデルとしての北海道・札幌市の可能性を指摘しました。 

「地政学的リスクが高まる中、エネルギーのサプライチェーンを多様化することは不可欠です。北海道・札幌市は、地域開発と脱炭素化の先進事例となり得ます。」と語り、最後には西山氏に対する連帯の意を込めた温かい言葉で締めくくりました。 

官民一体の推進体制の構築 

このラウンドテーブルには、関係省庁、金融機関、関連団体が積極的に参加し、終始オープンかつ建設的な意見交換が行われました。議論の中心となったのは、日本のエネルギー戦略の強化、グリーンファイナンスの仕組みの活用、そしてGXの目標達成に向けた官民連携の強化です。 

Climate Bondsは、基準策定、投資家との対話、地域との連携を通じて、こうした取り組みを今後も継続的に支援してまいります。また、今後はより広範な対話の一環とし  て、AIGCCおよびPRIと共同で7月開催予定のセミナーでの議論につなげていきたいと考えています。 

今後の展望 

日本政府がGXの取り組みをさらに拡大していく中で、Climate Bondsは、国内外の関係者によるサステナブルファイナンスの加速を引き続き支援してまいります。グリーン投資の可能性を切り拓き、強靭で低炭素な未来を実現するためには、継続的な対話と協調した行動が鍵となります。