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日本のグリーントランスフォーメーションにおける転換点 (A turning point for Japan’s Green Transformation)

Published: 22 Jul 2025

(This is a Japanese-language version of this blog. For the English-language version, please click here)

 

発行日:2025年7月22日 

日本はグリーントランスフォーメーション(GX)戦略を通じて、トランジション・ファイナンスの分野で世界的なリーダーの地位を確立しつつあります。2050年ネットゼロの目標を掲げ、ソブリン・クライメート・トランジション・ボンドを発行し、経済の脱炭素化と産業の地方創生を同時に目指すロードマップも策定しました。 

しかしながら、このトランジションを進める一方で、日本は依然として化石燃料の輸入に依存を強めており、国際情勢が緊迫化する中でこの戦略はますますリスクが高く、時代遅れなものとなっています。輸入化石燃料への依存は単なる気候リスクにとどまらず、国家安全保障上の脆弱性ともなっています。 

こうした背景を踏まえ、Climate Bondsは2024年に発行したレポートの中で、日本が気候変動対策で世界的なリーダーとなるための3つの主要な機会を提示しました。今回のGlobal Methane Hubの支援のもとで発行された最新のレポートでは、2025年上半期の動向を再評価するとともに、地政学的リスクの高まりが、日本の化石燃料依存の課題をさらに浮き彫りにしていることを指摘しています。 

適切な戦略のもとで。クリーンエネルギーへの投資は、エネルギー安全保障の確保、国家のレジリエンス強化、気候目標の達成、そして日本のトランジション計画の実現を可能にする道にもつながります。 
 

日本のエネルギー計画は依然として輸入に依存 

2025年2月に承認された第7次エネルギー基本計画では、液化天然ガス(LNG)を含む化石燃料の長期的な活用が引き続き示されており、今後の新規発電所建設に伴ってガス火力発電の設備容量は増加する見通しです。デジタル化や半導体製造の進展により電力需要は増加が見込まれていますが、再生可能エネルギーへの国内投資が加速しなければ、日本は引き続き輸入燃料に依存することとなります。 

LNGなどの化石ガスは「トランジション燃料」と見なされることもありますが、その主成分であるメタンは、20年間でCO₂の約80倍の温室効果を持つ強力な温室効果ガスです。 

さらに、エネルギー部門におけるメタン排出は、公式統計より70%も多いとされており、その大部分は漏洩によるものです。日本はグローバル・メタン・プレッジ(Global Methane Pledge)への参加や、LNGの生産国・消費国27か国が参加するCLEANイニシアティブの立ち上げなど、メタン排出への対策を進めています。しかし、同時にLNGインフラへの投資が続いており、これらの取り組みの効果が損なわれるリスクがあります。 

再生可能エネルギーへの優先的な投資は、地方活性化や国内産業の成長を促す可能性があります。反対に、化石燃料輸入への依存を維持することで、むしろ地政学的リスクにさらされ、産業の進展が遅れる可能性もあります。 

高まる地政学的リスクとエネルギー安全保障への脅威 

現在の国際情勢は、日本のエネルギー輸入への依存体制が、世界市場のショックや不安定性に対して脆弱であることを浮き彫りにしています。日本は現在、石油の99.7%、LNGの97.7%、石炭の99.6%を輸入に依存しています。LNGの供給ルートの多くは、ホルムズ海峡(世界のLNG流通の20%)や南シナ海(日本のLNG輸入の30%)など、不安定な海域を経由しています。 

加えて、ロシアとの長期契約の多くが2026年から2033年の間に満期を迎えるため、地政学的緊張が続く中で供給の確実性も揺らいでいます。日本のエネルギー計画ではLNGは地政学的リスクが低いとされていますが、実際の状況はそれに反しています。 

かつては石油ショックに備えるためのリスク分散策だった輸入依存が、今や日本の弱点となっています。世界のエネルギー構造が変化する中で、化石燃料からの脱却は国家としての持続可能性とレジリエンスを高めるために不可欠です。 

クリーンエネルギーは日本の好機 

こうした脆弱性を踏まえると、クリーンエネルギーは、日本が輸入依存を減らし、地方活性化を促進し、気候目標を達成するための重要なカギとなります。日本は近年、排他的経済水域(EEZ)における洋上風力発電の開発を可能にする制度改正を行い、風力発電の電源構成比を現状の1%から2040年には4~8%に引き上げることを目指しています。 

研究によれば、風力と太陽光を中心とする再生可能エネルギーは、2035年までに日本の電力需要の70〜80%、2050年には最大で90%をまかなえる可能性があります。これが実現すれば、エネルギー自給率は75%に達する見込みです。 

しかし、現在のエネルギー計画では、2040年時点で再エネ比率は40〜50%、自給率は40%にとどまっています。 

再エネ潜在力を引き出すためには、送電網の拡張・近代化、インフラ整備、国内サプライチェーンの構築、官民連携へのインセンティブ強化などが不可欠です。金融機関も、持続可能な金融拠点の整備や資本動員を通じて重要な役割を果たすことができます。 

脱炭素化を加速するための5つの提言 

日本がエネルギーミックスの脱炭素化を加速するには、以下のステップが有効です: 

  1. メタン排出削減の加速 
      漏洩検知の導入、透明性の向上、削減への資金支援を通じて、LNGバリューチェーン全体で排出を抑制。
  2. 送電網の拡張と近代化 
      送電ボトルネックの解消、出力制御の緩和、地方における再エネ導入を促進する。
  3. エネルギーシステムのレジリエンス強化 
      蓄電池、電力貯蔵、仮想発電所への投資を進め、需給バランスを安定させ輸入依存を減らす。
  4. 国際的なエネルギー市場のベストプラクティス導入 
      ドイツやスコットランドのように、許認可手続きや関係者との調整、送電網計画を統合し、再エネ市場の成長を迅速化する。
  5. 原子力は「つなぎの燃料」として活用 
      既存原発の再稼働は透明性と市民の信頼を前提に進め、長期的には再エネを中心に据える。 
     

日本にとっての戦略的選択 

GX戦略の一環としてクライメート・トランジション・ボンドの発行は、日本のリーダーシップを象徴するものであり、さらに強化されるべきであります。しかし、国際的な政治の不確実性は、再生可能エネルギーへのトランジションをより進める必要性を浮き彫りにしています。 

化石燃料への依存を続けることは、GXの目標と矛盾します。地政学的・環境的に不安定な時代において、国内の再エネ活用は日本にとって「エネルギー安全保障」「気候への対応」「経済活性化」の道を開く選択肢です。 

日本が必要とするエネルギーを国内で再エネにより供給できれば、地政学的な柔軟性と独立性が高まるだろう 
 - Council on Strategic Risks 

気候、経済、地政学の相互関係を正しく理解し、統合的な政策を打ち出すことができれば、日本はリスクを軽減するだけでなく、新たな競争力と持続可能な社会への道を切り開くことができます。 

上記5つの提言を土台としつつ、日本は国内のレジリエンスを強化し、地域全体のクリーンエネルギーへのトランジションを主導するチャンスがあります。 

今こそ、GX戦略の野心と政策・金融・インフラを一致させるときです。 
この貴重な機会の窓が閉じる前に。 

Climate Bonds